騎士と兵士と聖騎士と<大会前夜>

「ねぇ、その話ホント?」
「ホントだってば!今、噂になってるんだから!!」
2人の女兵士が噂話で盛り上がっている。
ここは、アレクサンドリア。ガーネット女王が治める平和な国。
その中で、兵士達の話に火をつけていることがあった。

「スタイナー様とベアトリクス様が大会に出るって!?」
また別の場所で兵士達が叫んでいた。
大会とは、アレクサンドリアの兵士達の間で1年に数回行われる闘技大会のことである。この大会に優勝すると賞金が出たりするわけではない。それでも、兵士達は自分達の腕を磨き、優勝を目指している。しかし最近では、大会に対する意気込みが低下している、といっても過言ではない。だからこそ・・・
「まあ、それでみんなのやる気がでるんだったらいいんじゃない?」
「そうだね」
まあ、街の、特に試合に出場する兵士達の見方はそんなところである。では2人を少し覗いてみよう・・・

その男は剣を磨いていた。どうやら休憩を兼ねて、ついでに剣も磨いているらしい。しかし、休憩するときぐらい鎧を脱がなければ、身体も休まらないと思うが。そして、そんなことをするのは、この街では1人しかいないだろう。
アデルバート・スタイナー、その人である。
ついでに言うと、大会では決められた剣をを使う。しかし、彼はどうやら自分の剣を使うために、磨いているらしい。そのうち気付くと思うが・・・
スタイナーは、ハッとした顔になる。
「大会ではこの剣は使えないのではないか?」
ほら、やっぱり。
こんなスタイナーも剣の腕は一級品である。彼に対抗できるのは彼女ぐらい・・・

その女は、かすかにうつむいていた。なぜこんなことになったかは分からない。
いつの間にか、自分まで大会に出ることになってしまうとは。
ただ、スタイナーが大会に出るということを聞いた直後、気付いた時には自分も大会に登録していた。対抗意識を燃やしているわけではない。それなのになぜ・・・?自分が、無意識のうちに動かされてしまう、そんな感覚が不思議でたまらなかった。
「ベアトリクス様、どうかなさいましたか?」
隣にいた、女兵士が話し掛けてきた。
そう、女の名前はベアトリクスという。
「いえ・・・なんでもありません」
冷静を装って、考えを中断した。

「でもさあ、あの2人が決勝で当たったら・・・」
兵士達の会話が、まだ続いている。
「そうだよね。絶対やばいって!」
この兵士達が心配していることは、スタイナーとベアトリクスが決勝で戦うことなのである。ちなみに、大会はトーナメント制でAグループとBグループがある。そして、それぞれのグループの優勝者が戦う。スタイナーがAグループでベアトリクスがBグループ。
実力からして、この2人が決勝で戦うのはまず間違いない、というのが兵士達の予想である。それだけに兵士達の心配は絶えない。
「まぁ、明日から大会が始まるんだから。決勝に2人が残ってから考えましょ」

そして噂の中心となっているこの2人は・・・

(どんな相手が来ても全力で戦うだけである・・・そして、優勝したら・・・)
(もしスタイナーと戦うことになったら・・・)

お互いに思っていることは違うようである。まぁ、スタイナーのほうはベアトリクスは気付いている重大なことに気付いてないだけ、って気もするが。

それぞれの思いを胸に、大会の朝を迎えた。