大いなる福音  その2

 「とうとう、この部屋ともお別れか・・・。」
ベアトリクスは自室を眺める。
 「私の想い出はセイブザクイーンと共に・・」
旅に出よう、それがベアトリクスの出した答えだった。スタイナーの事も、剣の道も、
今のままではどちらも失ってしまう。気持ちが落ち着くまでアレクサンドリアを離れよう。
 「さらば・・・アレクサンドリア。」
 
何度も歩いた城内が今夜は、やけに広く感じた。夜の城内は歩く人も無く静まり返り
ベアトリクスの足音だけがこだまの様に響く。月の綺麗な夜だった。
いつしか下を向き歩くベアトリクスの目に一人の影法師が映る。
よく見覚えのあるとんがり帽子の影。
 「ベアトリクス・・・どこに行くのだ?」
よく聞き覚えのある特徴の有る声。
 「訳は・・・聞かないで下さい。」
 「訳など聞きたいわけでは無いのだ!!私は・・!!」
ベアトリクスは顔を上げられなかった。スタイナーの顔を見たら今まで押し殺していた何かが、
プッツリととぎれそうで・・・。
 「いや・・・・その、なんだ・・・」
スタイナーも言葉にならない。有無を言わさず抱きしめたいのをこらえ、言葉を搾り出した。
 「私はもう、二度とお前を失いたくないのだ!」
ベアトリクスのなかで何かが弾けた。ゆっくりと顔を上げスタイナーを見る。いつに無く真剣で
でも優しいスタイナーがそこに居た。
 「これからも一緒にガーネット女王を守っていきたいのである。」
ベアトリクスの瞳から一粒、二粒と涙がこぼれる。
 「スタイナー・・・」
ゆっくりとスタイナーの胸に包まれるベアトリクス。ようやく手に入れた宝物をスタイナーは
ぐっと抱きしめる。そしてそっと髪に触れる。
 「ずっと触れたかった。お前の髪に。」
ベアトリクスを抱く手に力がこもる。その力にベアトリクスは顔を上げ、
 「私もずっと・・・」
その言葉をさえぎる様に唇がふさがれる。お互いの苦しみ、哀しみ、想いがそこから流れ込んでくる。
将軍という立場も部下も、剣の道も、スタイナーを想う気持ちに比べれば小さなこと。そうわかった。
いままで積み重ねたものを自分が否定したくなくて、逃げていた。小さな自分が居た。
 「ベアトリクス、もう何処にもいくな。わたしはお前以上に失ってはならぬ物などこの世には無い
  のだ。ずっとそばに居てくれ。」
唇を離し、スタイナーは呟く。ベアトリクスは思う、
 (もう逃げない。この人が教えてくれた。)
そしてベアトリクスの方から、ゆっくりと口付ける。
月の明かりが二人に注がれる。まるでそれは、天使の福音の様にも見て取れた。      
                                    おわり^^
本当は色々伏線引いてたんですが、生かせませんでした^^反省